非正規雇用の働き方が広がるなか、将来の資産形成に不安を感じている方もいるでしょう。
パートタイマーや契約社員の方は、退職金制度の対象外であることが多く、老後資金に備える手段が限られることも少なくありません。
しかし、企業型確定拠出年金は、制度設計によっては正社員でなくても加入することが可能です。
厚生労働省の調査によれば、企業型確定拠出年金には約830万人(2024年3月時点)が加入し、年々増加傾向にあります。※
本記事では、企業型確定拠出年金の概要やパートタイマー・契約社員が加入する条件、加入者側と企業側のメリット・デメリットを解説します。
従業員の将来に向けて賢く備えたい企業経営者は、企業型確定拠出年金を導入する際の参考にしてください。
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パートタイマーや契約社員でも企業型確定拠出年金に加入できる?
パートタイマー(以下、パート)や契約社員でも、一定の条件を満たせば、企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入できます。
制度上は正社員でなくても、60歳未満の厚生年金被保険者であれば、企業型確定拠出年金への加入が認められているためです。
ただし、勤務先企業が企業型確定拠出年金制度を導入していることが必要です。
また、企業は合理的な理由がない限り、正社員と同等の働き方をしている非正規社員を加入対象から外せません。
そもそも企業型確定拠出年金とは?
企業型確定拠出年金は、企業が従業員の退職後の生活資金確保を目的として導入する年金制度です。
企業は毎月一定額の掛金を拠出し、従業員は自分で投資信託などの商品を選択し、資産運用を行います。
将来受け取れる退職金や年金額は、従業員が選択した商品の運用成果で増減します。
なお、従業員は積み立てた資産を年金または一時金として受け取れますが、原則として60歳まで引き出せません。
企業型確定拠出年金の加入条件
従業員が企業型確定拠出年金に加入できる主な条件は、以下のとおりです。
- ・厚生年金の被保険者である
- ・勤務先企業が企業型確定拠出年金を導入している
一部の企業では、加入対象を勤続年数や職種などで限定している場合もあります。
ただし、企業は加入資格を自由に設定できるわけではありません。基準には合理性と客観性が求められ、不当な差別は認められていません。
企業型確定拠出年金への加入は条件付きですが、正しく制度を理解すれば、パートや契約社員でも対象になる可能性があります。
企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)の違い
企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)の主な違いは、以下のとおりです。
企業型確定拠出年金 | 個人型確定拠出年金 | |
掛金の拠出 | 企業 | 加入者 |
手数料の負担 | 企業 | 加入者 |
加入対象者 | 導入企業に勤務する従業員 | 20歳以上60歳未満の国民年金被保険者 |
掛金上限額 | 月額55,000円 | 加入者の職業や企業年金制度で異なる |
企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)の大きな違いは、掛金や手数料を誰が負担するかという点です。
企業型確定拠出年金は企業が掛金と手数料を負担するのに対し、個人型確定拠出年金は原則として加入者本人がすべてを負担します。
加入できる対象者にも違いがあります。企業型確定拠出年金の場合、制度を導入している企業に勤務し、厚生年金に加入している人が対象です。一方で、個人型確定拠出年金の場合、自営業者や会社員、学生、主婦など、幅広い人が利用可能です。
なお、一定の条件を満たせば、両方の制度を併用できます。ただし、年単位拠出やマッチング拠出をしている場合は併用できない点に注意しましょう。
パートや契約社員が企業型確定拠出年金に加入するメリット
パートや契約社員が企業型確定拠出年金に加入する主なメリットは、以下のとおりです。
- ・税制優遇を受けられる
- ・転職時に資産を持ち運べる
- ・個人口座管理手数料がかからない
それぞれ詳しく解説します。
税制優遇を受けられる
企業型確定拠出年金に加入するメリットのひとつは、税制面での優遇を受けられることです。
通常の金融商品では運用益に約20%の税金がかかりますが、企業型DCでは運用益に税金がかかりません。
また、掛金も非課税扱いとなるため、効率的に資産形成を進められます。
さらに、掛金は企業が拠出するため、自分の収入から全額を出す必要はありません。家計への負担を抑えつつ、将来に向けた備えができます。
転職時に資産を持ち運べる
企業型確定拠出年金では、転職や退職時に積み立てた資産を持ち運べます。
転職先に企業型確定拠出年金制度があれば、そのまま資産を移して運用を続けられます。制度がない場合でも、個人型確定拠出年金に移換することで継続が可能です。
勤務先が変わっても資産形成を続けられるため、キャリアの変化にも柔軟に対応できます。
流動性が比較的高いパートタイマーや契約社員には、キャリアの変化に合わせて利用できる柔軟性は大きなメリットです。
個人口座管理手数料がかからない
企業型確定拠出年金では、企業が運営管理機関に支払う手数料を負担するため、加入者が自分で費用を支払う必要はありません。
一方で、個人型確定拠出年金を利用する場合、加入者自身が運営機関を選び、年間数千円の手数料を自己負担することも少なくありません。
口座管理費や事務手数料などのコストが毎年積み重なると、長期的には大きな負担になるでしょう。特に、拠出額が少ないパートタイマーや契約社員は、手数料の影響が相対的に大きくなります。
パートや契約社員が企業型確定拠出年金に加入するデメリット
パートや契約社員が企業型確定拠出年金に加入する主なデメリットは、以下のとおりです。
- ・60歳まで資産を引き出せない
- ・元本割れリスクがある
- ・運営管理機関を選択できない
企業型確定拠出年金への加入を検討している従業員の方は、メリットだけでなくデメリットも理解したうえで、加入しましょう。
60歳まで資産を引き出せない
企業型確定拠出年金に加入するデメリットのひとつは、原則として60歳まで資産を引き出せないことです。
原則として中途解約は認められておらず、急にお金が必要になっても、途中解約して現金化できません。
パートタイマーや契約社員の方は収入が不安定になりやすいため、資産の流動性が低い点には注意が必要です。
例外的に脱退一時金の受給が認められるケースもありますが、条件は厳しく定められています。加入前に家計の状況を見直し、無理のない範囲で拠出額を設定することが大切です。
元本割れリスクがある
企業型確定拠出年金には元本割れリスクがある点も理解しておきましょう。
株式投資信託などの比較的リスクが高い運用商品を選択した場合、市場の変動によっては受け取れる金額が元本を下回ることがあります。
投資経験の少ない方にとっては、どの商品を選ぶべきかの判断が大きな課題です。
ただし、定期預金や保険商品などの元本確保型商品も用意されているため、リスクを抑えながら運用できます。
自分のリスク許容度を理解し、適切な商品を選択することが重要です。
運営管理機関を選択できない
企業型確定拠出年金では、加入者は運営管理機関(金融機関)を自由に選択できません。
勤務先企業が運用管理機関を指定するため、用意されている運用商品や手数料体系も企業の選択に依存します。
自分が希望する投資スタイルに合った商品が用意されていない場合もあるため、選択肢の少なさが不満につながるかもしれません。
企業型確定拠出年金への加入を検討する際は、選択可能な商品を確認し、自分の運用方針と合っているかを見極めることが重要です。
企業が企業型確定拠出年金を導入するメリット
自社に企業型確定拠出年金制度を導入しようと考えている経営者は、加入者側だけでなく、企業側のメリット・デメリットも把握しておきましょう。
企業が企業型確定拠出年金を導入する主なメリットは、次の3つです。
- ・積立不足や退職給付債務が発生しない
- ・優秀な人材の確保と定着につながる
- ・掛金を全額損金算入できる
それぞれ詳しく解説します。
積立不足や退職給付債務が発生しない
企業型確定拠出年金では、企業が掛金を拠出した時点で責任が完了するため、将来的な積立不足や退職給付債務が発生しません。
従来の確定給付企業年金(DB)のように、運用成績の悪化で企業が追加負担を求められないため、財務の安定性向上に大きく寄与します。
また、将来の給付額が確定していないため、長期的な財務計画が立てやすくなります。
優秀な人材の確保と定着につながる
福利厚生制度の一環として企業型確定拠出年金を導入することで、従業員の満足度を高め、優秀な人材の確保や定着につながります。
企業型確定拠出年金を整備している企業は、同業他社との差別化を図る手段として活用でき、採用活動でも有利に働くでしょう。
また、パートタイマーや契約社員にも制度を適用すれば、多様な働き方を尊重する企業としてのイメージ向上が期待できます。
働きがいのある職場環境の整備で、従業員のモチベーション向上と離職率の低下につながります。
掛金を全額損金算入できる
企業型確定拠出年金の掛金は、法人税計算上、全額損金算入できます。
企業の課税所得が圧縮され、法人税の負担軽減につながります。利益が出ている企業が制度を利用すると、実質的な負担を抑えながら、従業員への福利厚生を充実させることが可能です。
節税と同時に人材の処遇改善も図れるため、経営面でも効果が期待できます。企業型確定拠出年金は、財務の健全性を保ちながら従業員満足度の向上も実現できる、一石二鳥の制度といえるでしょう。
企業が企業型確定拠出年金を導入するデメリット
企業が企業型確定拠出年金を導入する主なデメリットは、次の3つです。
- ・掛金拠出の負担が生じる
- ・運営コストがかかる
- ・従業員に投資教育をする必要がある
企業側が企業型確定拠出年金を導入するメリットとデメリットの両方を理解しておくことで、スムーズに導入できるでしょう。
掛金拠出の負担が生じる
企業型確定拠出年金を導入する企業は、従業員数や拠出額に応じて、従業員ごとに毎月掛金を拠出することが必要です。
景気が悪化して企業の業績が落ち込んだ場合でも、掛金の支払いは基本的に継続しなければなりません。特に中小企業には、固定的な支出が経営に与える影響が大きくなることもあります。
企業型確定拠出年金制度の導入を検討する際には、自社の財務状況や将来の事業計画をしっかりと見極めることが重要です。
運営コストがかかる
企業型確定拠出年金の運営には、制度管理や事務処理に関わるコストが継続的に発生します。
具体的には、制度導入時のコンサルティング費用や運営管理機関への手数料、社内の事務負担増加による人件費などがあります。
システム導入費用や規約変更時の手続き費用なども発生するため、トータルコストを事前に把握することが必要です。
運営コストは累積すると大きな負担となるため、特に中小企業では運営コストが大きな負担になる可能性があります。
長期的な視点で費用対効果を検証し、企業にとって適切な制度設計をしましょう。
従業員に投資教育をする必要がある
企業型確定拠出年金では、従業員が自ら運用商品を選んで資産運用するため、投資や資産形成の知識が求められます。
金融リテラシーが十分でない従業員にとっては、適切な商品を選ぶことが難しく、将来的な運用成果にも影響があるでしょう。
そのため、企業は従業員に対して、制度の仕組みやリスクへの向き合い方などの投資教育をしなければいけません。投資教育を通じて、従業員が主体的に資産運用へ取り組める環境を整えることが大切です。
企業にとっては手間やコストがかかりますが、結果的に従業員の満足度向上や制度の有効活用につながるでしょう。
パートや契約社員も加入できる企業型確定拠出年金の導入をご検討ください
本記事では、企業型確定拠出年金の概要やパートタイマー・契約社員が加入する条件、加入者側と企業側のメリット・デメリットを解説します。
企業型確定拠出年金は、一定の条件を満たせば雇用形態にかかわらず、従業員の長期的な資産形成を支援する優れた年金制度です。
パートタイマーや契約社員の方にとっても、税制優遇や転職時の資産持ち運びなど多くのメリットがあります。企業にとっても人材確保や税務上の優遇措置など、導入効果は十分に期待できるでしょう。
ただし、パートや契約社員がいる会社で企業型確定拠出年金を導入する際には、最低賃金を下回らないように注意が必要です。企業型確定拠出年金の拠出額は従業員の給与所得とみなされないため、掛金額を控除した給与が最低賃金を下回っていないか確認しなければいけません。そうした場合、掛金額が少額となってしまう可能性がある点に留意してください。
とはいえ、働き方が多様化する現代では、雇用形態を問わない包括的な福利厚生制度の整備は企業の競争力向上に直結します。初期コストや運営負担はありますが、長期的な視点では従業員満足度の向上と優秀な人材の定着につながる投資といえます。
パートや契約社員の方も安心して働ける環境づくりのために、企業型確定拠出年金の導入を積極的に検討してみてはいかがでしょうか。
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