ファイナンシャル・ウェルビーイングという概念が注目を集めています。この概念は、人々が経済的に安定を得るだけではなく、将来にわたって充実した生活を送るための重要な考え方です。
従業員のファイナンシャル・ウェルビーイングは、企業にとって無視できない課題となっています。従業員が経済的に不安を抱かず、幸福度を向上させることは、仕事のモチベーションに良い影響を与え、企業にとってもメリットとなるからです。
本記事では、ファイナンシャル・ウェルビーイングの概念や企業にとってのメリット、その実現に向けた具体的な取り組みについて詳しく解説しています。ぜひ最後までお読みください。
1.ファイナンシャル・ウェルビーイングとは?
ファイナンシャル・ウェルビーイングとは、経済的な安定を得ることで、将来にわたり幸せを実感できる状態であることを指します。この概念は、単に経済的に満たされていることを指すのではなく、以下のような要素を含みます。
このファイナンシャル・ウェルビーイングが注目される主な理由は、経済的な不安を抱くことが幸福度の低下につながるからです。充実した人生を送るには、お金に関する不安の解消が不可欠といえるでしょう。
従業員に対してファイナンシャル・ウェルビーイングへの取り組みを行うことは、企業にとってもメリットとなります。従業員が経済的に安心感を持つことで、職場に対する満足度が高まり、企業への貢献度も高まるからです。
金融庁の2023事務年度金融行政方針でも、ファイナンシャル・ウェルビーイングに触れられており、今後ファイナンシャル・ウェルビーイングへの注目度が高まっていくことが予想されます。
2.ファイナンシャル・ウェルビーイングを実現するメリット
ファイナンシャル・ウェルビーイングを実現することで、企業にとって主に以下のようなメリットがあります。
ここでは、それぞれ詳しく解説していきます。
2-1.生産性が向上する
ファイナンシャル・ウェルビーイングを実現することで、従業員の経済的安定が確保されると、心の状態も安定し、仕事での高いパフォーマンスにつながります。つまり、企業の生産性が向上する可能性が高まります。逆に、従業員が金銭的な不安を抱いた状態でいると、業務に集中することが難しく、生産性も低下するでしょう。
ファイナンシャル・ウェルビーイングは、欧米では既に広く認知されている考え方ですが、日本でも広まりつつあります。従業員が経済的に不安を抱くことなく、精神的に健全であることで、企業にもプラスの効果が期待できます。
2-2.企業価値が向上する
ファイナンシャル・ウェルビーイング推進による効果が広く浸透すれば、企業価値の向上が期待できます。
企業が従業員のファイナンシャル・ウェルビーイングを支援することは、人材に対する投資として捉えることができます。この人材への投資は、従業員の経済的な安定と将来に向けた不安の解消、それに基づいた生産性の向上へとつながっていくでしょう。これに成功した企業は、投資家からも評価され、企業価値も向上します。
今後、ファイナンシャル・ウェルビーイングの費用対効果に関するエビデンスが増え、認知度が高まれば、企業の取り組みが加速していくことが予想されます。
また従業員が抱く将来への不安が減少していくものとみられます。企業で働く多くの従業員は、将来に対する不安を抱えており、その中でもお金に関するものが多いといわれています。
引用:better place「【10月10日「世界メンタルヘルスデー」を前に「お金の不安がメンタルヘルスに与える影響」についての調査実施】7割以上がお金に不安があるとメンタルヘルスに影響すると回答」
ファイナンシャル・ウェルビーイングの推進は、金融リテラシーの向上につながり、従業員が抱く将来への不安の減少が期待されています。
金融リテラシーが向上すれば、将来のために適切な資産運用もできるようになります。従業員の将来への不安が減少すれば、集中して効率的に仕事ができるため、それが企業にとって生産性の向上につながります。
2-3.企業と従業員の間のエンゲージメントが高まる
ファイナンシャル・ウェルビーイングの推進は、企業と従業員の間のエンゲージメント向上にもつながります。エンゲージメントの向上とは、従業員が企業に対して、貢献意欲と深い愛着を持つことを意味するものです。
企業がファイナンシャル・ウェルビーイングの推進を図り、従業員が抱く不安が減少すれば、会社への信頼が深まり、従業員との良好な関係構築につながります。その結果、仕事に対してより高いモチベーションを期待できるでしょう。
従業員とのエンゲージメント向上は、企業への貢献意識を高め、生産性も向上し、利益の増加へとつながっていくでしょう。
2-4.離職率が低下する
従業員が経済的な安心感を得ると、心身の健全性も高まります。その結果、企業へのロイヤリティが向上し、離職率の低下につながります。
特に、人材不足や高い離職率に悩む業界においては、ファイナンシャル・ウェルビーイングの推進により、離職率低下の効果が期待できます。従業員の定着率を高めると、対外的に企業のイメージアップが図られ、優秀な人材確保も可能です。
ファイナンシャル・ウェルビーイングを重要視する企業は、従業員のライフワークバランスにも関心が高い傾向にあります。このことが、従業員の企業に対する貢献意識を高め、エンゲージメントの向上へとつながり、離職率低下に寄与するでしょう。
3.ファイナンシャル・ウェルビーイング実現に向けた企業の取り組み
ファイナンシャル・ウェルビーイングの実現に向け、企業ができる主な取り組みは以下のとおりです。
ここでは、それぞれ詳しく解説していきます。
3-1.企業型確定拠出年金(企業型DC)の導入
企業型確定拠出年金(企業型DC)は、ファイナンシャル・ウェルビーイングの実現に大きく貢献する制度です。企業型DCは、企業が従業員の将来のために掛金を拠出する制度で、従業員の老後資金確保にはとても有効です。
この制度を導入すれば、従業員の経済的な安心感につながります。また、企業にとっても福利厚生の充実といったイメージアップや、従業員の企業に対する満足度の向上といったメリットが期待できるでしょう。また企業型DCには役員も加入できるため、役員の資産形成にも活用できます。
この企業型DCの導入は、従業員の金融リテラシー向上にも効果的です。企業型DCは従業員自身で資産運用を行う制度であるため、企業は定期的かつ継続的に金融教育の機会を提供する必要があります。これにより、従業員は、自身の資産運用のため知識の習得が可能になります。その結果、金融リテラシーの向上が図られ、自らが積極的に老後資金の確保のため取り組むことができます。
制度を導入する際は、従業員が不安を感じることなくスムーズに進められるよう、専門家の支援を得ることが効果的です。社外の専門家を招くことや個別面談の実施は、従業員の理解を得るうえで重要な役割を果たすでしょう。
少子高齢化により将来受け取れる年金額の減少が予想される中、将来に向けたライフプランニングの重要度は増すばかりです。企業型DCは、この問題に対する有効な手段であるといえます。
企業型DCの導入は、ファイナンシャル・ウェルビーイングの実現に大きく貢献し、企業と従業員の双方にとって大きなメリットをもたらす制度であるといえるでしょう。
3-2.従業員に向けた金融セミナーの実施
従業員に向けた金融セミナーは、ファイナンシャル・ウェルビーイング推進の基本となる取り組みです。セミナーでは、老後に向けた資産形成、収入と支出を安定させるための家計管理、不測の事態に対する備えや保険など、実践的な知識の提供が主になります。特に企業型DCの導入となれば、従業員自ら資産運用をする必要があるため、金融セミナーの実施が重要となります。
継続的な金融セミナーの実施は、従業員の金銭的な不安の解消や、自らが行う資産運用の効率化へとつながります。金融教育に対する意識の向上を実現することで、従業員が理想的な将来をイメージできるようになります。
3-3.ファイナンシャルプランナーによる個別相談
ファイナンシャルプランナー(FP)による個別相談は、従業員一人ひとりの状況に合わせた助言が可能であり、ファイナンシャル・ウェルビーイング向上に有効な手段です。企業型DC制度の導入を従業員が不安なく受け入れ、老後資金の確保に積極的に取り組むためにも、専門家による個別面談は重要な役割を果たします。
FPとの個別面談では、従業員各々の経済状況に合わせ、次のような相談を実施し、個別具体的なアドバイスをもらうことができます。
そこで得た助言は、自身の状況に照らし合わせたものであるため、より実践可能なものであるといえます。
また、FPによる定期的な相談会を実施すれば、従業員は家計の状況を客観的に把握できるため、ライフプランに合わせた資産形成も可能となります。このような取り組みにより従業員の金融リテラシーが向上し、自身の状況にあった資産形成が可能となるため、ファイナンシャル・ウェルビーイングの実現へと近づくことができます。
4.まとめ
ファイナンシャル・ウェルビーイングは、経済的な安定を得ることで将来にわたり幸せを実感できる状態を指します。この概念は単に金銭的に安定しているだけではなく、充実した生活や将来への安心感、不測の事態への備えなども含みます。
従業員へファイナンシャル・ウェルビーイングを推進することは、企業にとってもメリットとなります。具体的には、生産性の向上、企業価値の上昇、従業員の将来不安の軽減、エンゲージメントの向上、離職率の低下など多くの効果が期待できるでしょう。
企業が行うファイナンシャル・ウェルビーイングの実現に、特に有効な手段といえるのが、企業型DCの導入です。この制度は、従業員の老後資金の確保を支援するだけでなく、資産運用のために必要な金融教育を通じて、従業員の金融リテラシーの向上が期待できます。
さらに、継続的な金融セミナーやファイナンシャルプランナーによる個別相談を実施することで、従業員の経済的幸福感を高め、企業側と従業員の双方にとって大きなメリットとなるでしょう。
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