作成日:2026年1月24日
2026年の法改正で、確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)は「拠出(入口)」と「受け取り(出口)」の両方が大きく変わります。中小企業の経営者・人事総務が押さえるべき結論は、次の3点です。
- ・出口:退職所得控除の調整期間が5年→10年に延長。退職金とDC一時金の受け取りが近いと、従業員の手取りに差が出やすくなります。
- ・入口①:企業型DCとiDeCoの拠出枠が整理され、会社員の拠出上限が月6.2万円に引き上げ(施行:2026年12月1日)。
- ・入口②:企業型DCのマッチング拠出(加入者掛金)の制限が見直し(施行:2026年4月1日)。
本記事では、2026年の法改正内容を「会社がやること」に落とし込み、導入・見直しの判断と実務が前に進むように整理します。
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【このような方へおすすめ】
- ・法改正に合わせて制度を見直したい
- ・採用・定着に効く福利厚生を整えたい
- ・退職金制度と企業型DCを整理したい
- ・従業員説明(10年ルール等)の準備をしたい など
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2026年法改正は「企業型DCの導入・見直し」を進める追い風になる
企業型DCは老後の資産形成のための制度ですが、会社側から見ると「人とお金の課題」をまとめて整えられる仕組みです。
- ・福利厚生として採用競争力を上げる
- ・賃上げだけに頼らず、報酬を設計できる
- ・退職金制度を整理し、将来への不安や不満を減らす
2026年の法改正は、社内で動くきっかけにもなります。「制度が変わる今が見直しのタイミングです」と伝えれば、導入や規約変更の話を進めやすくなります。
【出口】2026年1月:退職所得控除の「5年ルール」が「10年ルール」へ
何が変わるのか
退職金(会社の退職一時金)と、企業型DC/iDeCoの一時金は、どちらも退職所得控除の対象です。
これまでは、受け取り時期を5年以上空けると控除をそれぞれ活かしやすい(いわゆる「5年ルール」)と言われてきました。
2026年(令和8年)1月からは、この調整期間が10年に延びます。退職金とDCの一時金を近い時期に受け取ると、退職所得控除を満額使えず、税金が増えることがあります。
会社が押さえるポイント
この改正で、会社の手続きが増えるわけではありません。ただし、退職金制度がある会社ほど、従業員から次のような相談が増える可能性があります。
- ・「退職金とDCは、どちらを先に受け取るべきですか?」
- ・「一時金と年金、どちらが得ですか?」
- ・「うちの退職金だと、影響はありますか?」
質問が来たときに説明が曖昧だと、「制度って難しい」「なんだか損しそう」という印象が残ります。社内向けの説明資料やFAQを先に用意しておくと安心です。
【入口①】2026年12月:拠出限度額の見直し(上限引き上げ)
何が変わるのか
2026年12月1日施行の改正により、企業型DCの拠出限度額は月5.5万円→月6.2万円に引き上げられます。
併せて、iDeCoを使う場合の上限も整理されます。厚生年金被保険者は「企業型DCとiDeCoを合わせて月6.2万円まで」を基本に、拠出できる枠が決まるイメージです。
これまで「会社の制度によって、iDeCoの掛金上限が小さくなる」「条件が分かりにくい」といった声がありましたが、改正後は枠が広がり、積み立ての選択肢が増える方向です。
会社にとってのメリット
この改正は、従業員の資産形成を後押ししやすくなるだけでなく、会社側にもメリットがあります。
- ・福利厚生としての見せ方が強くなる(採用・定着に効く)
- ・報酬設計の幅が広がる(賃上げ以外の選択肢を持てる)
- ・制度の見直しを社内で進めやすい(「法改正対応」を理由にできる)
ここが大事:掛金上限が上がっても、会社の制度は自動では変わらない
法改正で上限額が見直されても、企業型DCは「会社の規約」と「掛金設計」に沿って運用されます。そのため、会社が規約変更や設計見直しをしない限り、従業員が拠出できる金額や運用の仕組みは、今のままになることがあります。
掛金上限の拡大をうまく活用するには、会社側で次の点を決めておく必要があります。
- ・事業主掛金を増やすか、現状維持にするか
- ・マッチング拠出をどう扱うか(後述)
- ・掛金変更のルールや案内方法をどうするか(周知の方法・タイミング)
「上限が上がるなら、従業員のメリットも自動で増える」と思われがちですが、実際は制度設計と周知の仕方で差が出ます。
だからこそ、法改正を待つだけではなく、事前に現状の掛金設計と運用ルールを棚卸ししておくと安心です。
【入口②】2026年4月:マッチング拠出の制限が見直し(加入者掛金の上限が広がる)
何が変わるのか
2026年4月1日から、企業型DCのマッチング拠出(加入者掛金)に関する制限が見直されます。これまで一般的だった「加入者掛金は事業主掛金を超えられない」という制限がなくなり、従業員が拠出できる幅が広がります。
会社にとってのメリット
この見直しのポイントは、会社が事業主掛金をすぐ増やせない場合でも、従業員が自分の判断で掛金を上乗せしやすくなることです。
「増やしたい」と思った従業員が、手続きさえ分かれば実際に増額できる状態になります。
ここが大事:ルールを決めて案内しないと、利用者は増えない
マッチング拠出は、制度として準備されていても、社内での共有が弱いと利用が広がりません。従業員が迷うのは、だいたい次の3点です。
- ・どうやって申し込むのか
- ・いつ変更できるのか
- ・自分がいくらまで拠出できるのか
活用を進めるなら、会社側で次の点を整えておくとスムーズです。
- ・マッチング拠出を導入・継続するか(利用できる設計にするか)
- ・掛金変更のタイミング(年1回/随時など)と手続きの流れ
- ・周知の方法(説明会の実施、資料配布、FAQ、社内ポータルの案内)
- ・「会社の掛金」と「本人の掛金」の違い(誤解が出やすいポイント)
「法改正が入ったから、自然に利用が増えるだろう」と期待するより、いつ・誰が・どう手続きするかを具体的に示した方が利用は広がります。
入口②は、制度の中身以上に、社内の案内方法と運用ルールで成果が決まります。
【関連】iDeCoの加入可能年齢は条件付きで最大70歳へ(2026年12月1日施行)
iDeCoは会社の制度ではありません。とはいえ、ルールが変わると従業員からの質問が増えます。
2026年12月からは、条件を満たす場合に限り、iDeCoは60歳以上70歳未満でも加入できるようになります。
ここで大事なのは、企業型DCとiDeCoを同じ扱いで説明しないことです。
企業型DCの加入可能年齢は会社の規約で決まります。一方、iDeCoは個人が任意で加入する制度で、加入できる年齢や条件は法令等のルールで決まります。
社内説明は、次の順で伝えると誤解が起きにくくなります。
- ・まず「自社の企業型DCは何歳まで加入できるか」
- ・次に「iDeCoは別制度で、加入可能年齢や条件が違う」
- ・最後に「併用できるか」「上限はいくらか」は人によって違うため、確認先(相談窓口)を案内する。
2026年法改正対応で失敗しやすいパターン
ここまで見てきた通り、法改正があっても、制度は「設計」と「周知」で活かし方が決まります。
そのうえで、次のような状態だと、制度が「導入しただけ」「あるのに使われない」になりやすいです。
- ・改正内容は社内に共有したが、会社としての方針が決まっていない
- ・マッチング拠出の案内が足りず、従業員が申し込み・増額に動けない
- ・10年ルールの質問に対する回答が担当者によって違う
- ・規約変更と周知の段取りが遅れ、改正のメリットを取りこぼす
これらは、確定拠出年金制度そのものの良し悪しというより、方針決定と運用設計の問題で起きます。
逆に言えば、会社の狙いを決め、規約と手順を整え、説明を一本化するだけで、制度は「使われる状態」に近づきます。次章では、2026年改正を踏まえて、導入・見直しを前に進める手順を整理します。
まとめ:2026年法改正で、会社が押さえるべきこと
2026年は、受け取りの注意点(10年ルール)と、拠出面の見直し(上限6.2万円・マッチング拠出の制限見直し)が同時に進みます。企業型DCを既に導入している会社は「規約と運用の見直し」が必要です。未導入の会社にとっても、採用・定着や退職金設計を見直す良いタイミングになります。
進め方は次の順がスムーズです。
- 会社としての狙い(採用・定着/報酬設計)を決める
- 掛金設計・規約変更の要否を判断する
- 従業員説明を「出口」まで含めて整える
よくある質問(FAQ)
2026年の法改正で、企業型DCを導入していない会社は不利になりますか?
直ちに不利と決まるものではありません。ただし、制度改正の時期は福利厚生を見直す会社が増えやすく、求職者にとっては企業の比較材料になりやすいです。
退職所得控除の「10年ルール」は会社の退職金制度にも関係しますか?
関係します。退職金(一時金)と企業型DC/iDeCoの一時金の受け取りが近いと、退職所得控除を満額使えず、税金が増えることがあります。
拠出上限が月6.2万円になるなら、何もしなくても従業員は増額できますか?
企業型DCは規約と運用設計が前提です。事業主掛金・加入者掛金(マッチング拠出)などの設計や周知が必要になります。
マッチング拠出の制限見直しで、会社がすぐにやるべきことは何ですか?
規約・運用ルール・説明資料の整備です。制度を「使える状態」にしないと、従業員の行動につながりません。
iDeCoの加入年齢が70歳まで拡大する件は、会社側の対応が必要ですか?
会社の手続きが直接増える話ではありません。ただし従業員の質問が増えやすいので、自社制度(企業型DC)とiDeCoの違いを分けて説明すると混乱が減ります。