確定拠出年金には、企業型確定拠出年金(企業型DC)と個人型確定拠出年金(iDeCo)があります。本記事では、それぞれの制度における金額変更について解説します。
また、従業員および役員の資産形成につながり、高い節税効果が期待できる企業型DCの掛金を設定するルールも紹介します。企業型DCにおける掛金の目安にも触れているので、最後まで読んでみてください。
1.企業型DCとiDeCo(個人型確定拠出年金)の違い
確定拠出年金制度には、企業型DCとiDeCoの2種類があります。両者は老後の資産形成を目的としていますが、運用方法や特徴に違いがあります。
1-1.企業型DC
企業型DCは、企業が主体となって従業員の年金資産を積み立てる制度です。毎月の掛金は企業が拠出し、従業員自身が運用を行います。
企業型DCの場合、企業は掛金を損金計上できるため法人税の節税効果があります。また、従業員にとっては掛金が所得控除の対象となるメリットがあります。
また、企業型DCに関連して「マッチング拠出」と「選択制DC」という制度があります。
マッチング拠出とは、企業が拠出する毎月の掛金に、従業員自身が掛金を上乗せして拠出できる仕組みです。一方、選択制DCとは「自身の給与の一部を企業型DCの掛金として拠出するか、もしくは給与として受け取るか」の選択肢を従業員に提供する仕組みです。
1-2.iDeCo
iDeCoは個人が主体となり、自ら掛金を拠出して運用する仕組みです。iDeCoの場合は個人の所得控除として、税制優遇措置を受けることが可能です。
企業型DCとiDeCoの違いは、企業型DCとiDeCoの併用は可能?メリットとデメリットを解説で詳しく解説しています。
2.企業型DCとiDeCoにおける金額変更のルール
iDeCoと企業型DCでは、金額変更のルールが異なります。
2-1.企業型DCにおける金額変更
企業型DCにおける金額変更は、次の2つの場合に分けて考える必要があります。
・企業型DCにおける金額変更の原則
・マッチング拠出および選択制DCに関する金額変更
それぞれについて、以下で解説します。
2-1①企業型DCにおける金額変更の原則
企業型DCの場合、金額変更のタイミングや回数は、制度を導入している企業の規約やプランによります。そのため、金額変更の手続きとあわせて会社に確認する必要があります。
2-1②マッチング拠出および選択制DCに関する金額変更
企業型DCにマッチング拠出が導入されている場合、従業員が上乗せする掛金に関する金額変更を年に1回行なうことができます。
ただし、以下に記載する4つは金額変更の回数に含まれません。
・事業主の掛金額が増加し、加入者の掛金との合計が拠出限度額を超過した場合
・事業主の掛金額が減少し、加入者の掛金の金額を下回った場合
・加入者掛金額の決定方法が変更され、加入者掛金額をやむを得ず変更する場合
・加入者掛金額を全額停止する(ゼロにする)場合と、加入者掛金額をゼロから戻す場合
また、選択制DCが導入されている場合、金額変更を自由に行なうことができます。ただし事務の負担を考慮し、金額変更の回数を年1回から年2回と定めるプランも多くなっています。
マッチング拠出および選択制DCにおいて金額変更を行なう場合は、各金融機関のプランに応じて申請書に変更額を記載して提出してください。
2-2.iDeCoにおける金額変更
iDeCoの場合、金額変更を年に1回行なうことができます。掛金は、毎月5,000円から1,000円単位で変更が可能です。
金額変更の際は、iDeCoに登録されている公的年金の種別に応じた「加入者掛金額変更届」を提出する必要があります。また納付月と金額を指定して掛金を納付している場合は、「加入者月別掛金額登録・変更届」の提出が必要となります。
3.企業型DCの掛金設定ルール
ここからは、企業型DCの掛金に関するルールを詳しく解説します。企業型DCの掛金設定に関するルールには、以下の2つがあります。
・掛金には拠出限度額あり
・3種類の掛金設定方法
詳しく見ていきましょう。
3-1.掛金には拠出限度額あり
企業型DCでは、限度額を超えて掛金を拠出することはできません。
マッチング拠出では、企業が拠出する掛金に従業員が上乗せ可能ですが、以下の2点の条件を満たさなければなりません。
・従業員の掛金額が会社の掛金額を超えない
・企業拠出分と従業員掛金の合計が、掛金の拠出限度額を超えない
具体的な拠出限度額は以下の通りです。
3-2.3種類の掛金設定方法
企業型DCの掛金には、拠出限度額内で以下の3つが認められています。
・定額の掛金設定
・定率の掛金設定
・定額と定率の組み合わせによる掛金設定
それぞれの内容を確認していきます。
3-2①定額の掛金設定
全加入者(従業員)が同額の掛金を「定額」として設定する必要があります。
勤続年数や年齢、資格等級、役職、会社への貢献度にかかわらず、全員が同じ金額を拠出します。労使間の合意があっても例外は認められません。
3-2②定率の掛金設定
定率の掛金設定では、給与に一定の比率を掛けて掛金額を決定します。この方法は、給与の変動に応じて掛金も変わるため、柔軟性があります。ただし、勤続年数などに応じて異なる比率を設けることは認められていません。
掛金計算の基礎となる給与には、基本給や役職手当、技能手当など、毎月一定額が支給される基準内賃金が含まれます。賞与を含めることも可能です。
この仕組みにより、従業員の給与に応じた掛金設定が実現できます。
3-2③定額と定率の組み合わせによる掛金設定
定額と定率を組み合わせた掛金設定は、柔軟性を持たせるための方法です。基本的な定額部分に加え、給与の一定割合を掛金とする定率部分を組み合わせます。この設定により、従業員の給与水準に応じ、比較的公平な掛金設定が実現できます。
従業員の給与構造が多様な企業や、柔軟な年金制度を求める場合に適しているといえるでしょう。設定時には、法令に準拠しつつ、従業員間の公平性を確保することが重要です。
4.企業型DCの掛金の目安
企業型DCの掛金設定には、世間の相場が参考になります。企業年金連合会の2019年度の「決算確定拠出年金実態調査結果」によると、掛金月額の平均は8,526円で、多くの企業が5,000円から15,000円の範囲で設定しています。他の企業年金制度と併用している場合は5,610円です。
2022年度の「決算確定拠出年金実態調査結果」では、企業型DCのみ実施の場合、月額平均が9,844円です。一方、他の企業年金制度と併用している場合は5,633円です。
これらの数値は、企業が掛金を決める際の目安となるでしょう。ただし、各社の状況に応じて適切な金額を設定することが重要です。
参考:企業年金連合会「2019年度決算確定拠出年金実態調査結果」(P17・18)
参考:企業年金連合会「2022年度決算確定拠出年金実態調査結果」(P17・18)
5.まとめ
確定拠出年金には、企業型DCとiDeCoがあり、金額変更に関するルールが異なります。
企業型DCにおいて、企業が拠出する掛金の金額を変更できるかどうかは、制度を導入している企業の規約やプランによります。
企業型DCにマッチング拠出が導入されている場合、従業員が上乗せする掛金に関する金額変更を年に1回行なうことができます。選択制DCが導入されている場合、金額変更を自由に行なうことができますが、企業により金額変更の回数を年1回から年2回と定められているケースが多いです。
iDeCoの場合、金額変更を年に1回行なうことができます。
企業型DCの場合、適切な金額設定と変更管理により、企業は従業員の福利厚生の充実と企業の財務健全性の向上の両立を実現できます。継続的な見直しと改善を通じて、より効果的な制度の構築と運営を目指しましょう。
当社マウンティンは、企業型DCの導入から運用までワンストップで支援しています。各種手続きや運用のサポートはもちろん、金額変更についてもご相談いただけます。
従業員への説明も含め丁寧にサポートいたしますので、ぜひ一度お気軽にお問合せください。